捨てるべき家
とある家を訪問した。
その家の持ち主について触れる事はしないが立地も建物もそれなりに問題がある。
生家ではないらしい。
親御様が生前、頑張って建てた家である事は間違いないようだった。
公共機関が利用できず、車か自転車のみで移動するしかない、そんな場所に家はある。
広すぎる家。使う部屋は限られていた。
掃除していたかどうかなんて今更どうでもイイ話だ。
使わない部屋はドンドン朽ちて行く。使わないとダメになっていくのだ。それは人間と同じで。
そんな影のある家でも住み続けないといけない理由があった。
金銭的問題だ。
早く出て行かれた方がいいに違いないだろう。いずれ年を取れば思考も弱くなれば情報も希薄になる、やがて外出も億劫になる。その先は言わずもがな。
「体が動くうちに、別の住処を考えた方がいい。」
その方はやがて英断された。
断腸の思いだったか、せいせいしたかは分からないけれど、住み慣れた家を明け渡す決意をされた。
親御様の多くが「子供の為に残してやりたい。」と資産を残されるのだけれど、家って有難迷惑だと思う。
維持費がかかる、場所が悪い、それでも家賃が発生しないからお得だから出て行きたくてもと二の足を踏ませる…だけど身体を悪くしてしまったらタクシーで移動しないといけなくなる、どうすれば良いかなど云云……
受け継いだ子供を散々混乱させる厄介な案件を有難そうに遺産として残すのはいかがなものか、と思ってしまう。
誰も住まない家になった。時代の流れもあるのかもしれない。
もっと早く売っておけば良かったのかもしれないけれど、人生は思ったようにいかない訳で、節目と言えば良い節目だったのかもしれないです。
まずはお元気で。人生の再出発を祈っております。